#Dialog1「オーセンティックリーダーシップ」 一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事 荻野淳也さん Vol.1



5、オーセンティックリーダーシップが生まれた背景

  リーマンショックとエンロン事件


荻野:そうだったのですね。もともとオーセンティックリーダーシップが広まったきっかけはハーバードのビル・ジョージですね。メドトロニックという会社のCEOをやっていたビル・ジョージがハーバードでMBAの教授としてオーセンティックリーダーシップを語り始めたのが広まるきっかけでした。


(画像:川嶋私物)

川嶋:社会全体がフォーカスしていくきっかけになりましたよね。何故ハーバードがオーセンティックリーダーシップを言い始めたかというと、リーマンショックがきっかけだったと言われています。世界中から優秀な人を集めて、優秀なビジネスリーダーを育てていた。けれども、卒業生の所属先の一つでもあるリーマンブラザーズが世界的な金融危機を引き起こしたことを教訓に、優秀さだけではなく、倫理観について語られるようになり、Being, Doing, Having のBeingに力を入れる流れになっていきましたよね。成果を出すためのスキルを身に付けることに力を入れていくだけではなく、もう一段本質的な人の心の在り方や、何を寄りどころにしてリーダーシップを発揮していくのかというBeingに立ち返ることに重きが置かれるようになりました。

オーセンティックリーダーシップが生まれてくる社会的な背景として、エンロン事件もきっかけの一つだったかと思うのですが、荻野さんは、エンロン事件も当事者サイドで関わりがおありなんですよね。当時のご経験から、どのようにオーセンティシティに荻野さんご自身が行き着かれたのかをお伺いしたいです。 

荻野:きっかけの一つはまさにエンロン事件だったかもしれないですね。もしかしたら、20代・30代のビジネスパーソンはエンロン事件を分からない人も多いかもしれないけども、新しい電力会社として金融口座を使ったサービスを展開していた会社です。そこの監査をしていたのがアーサー・アンダーセンという監査法人で、実は僕は2000年から2003年ぐらいまで日本のアーサー・アンダーセンのコンサルティング部門にいました。そして2001年・2002年ぐらいにエンロン事件が起こって、当時は四大監査法人だった歴史ある監査法人だったのですが、エンロン社の監査をして不正を見つけたけど、それを隠滅したんじゃないかという疑いをかけられて信用失墜し、アーサー・アンダーセンはなくなってしまうのです。 

当時の状況は、初めはアメリカの金融当局から通達が出ているから、エンロン関係の資料は破棄するなと。どんどん疑いが高まっていって他の会社のドキュメントも削除するなと。最後には全然関係ない日本法人の資料とかも一切破棄するなと。証拠隠滅の疑いがあるっていうことで、間接的にというか、直接的にそんなことをずっと眺めていて、この会社やばいなって思っていました。この先どうなるのかと考えていたら、あっという間でした。日本の代表からある日突然、日本の法人は当時のライバル会社だった監査法人のコンサルティング部門に買収されますと社員に通達が来て会社がなくなりました。 

本当に初めは数人がきっかけの出来事が、当時アーサー・アンダーセン、グローバル全体で何万人という社員が一挙に職を失いました。そのような経験をして倫理観という、良識・良心っていうところを初めて向き合ったというか、仕事上でそれは当たり前なんですけども、それがおざなりになったときにこうなってしまう。世界的なニュースになってしまう。数万人、もしかしたら職員の家族入れたら数十万人ですよね。そういった方々の人生に影響が及ぶのだっていうことを、実体験として理解したという感じですね。 

川嶋:ものすごい原体験ですよね。リーダーシップにおいて、今おっしゃった倫理観ってものすごく大事で、最初は数人がきっかけだったことが、数十万人、取引先やステークホルダーも含めると数百万人の人生に影響を与えるようなことまで発展するかもしれない。1人の意思決定、もしくはたった数人の意思決定の重みを知ることってものすごく大事だと思っています。

荻野:そうですね。エンロン事件もそうだし、リーマンショックも、そういったところからオーセンティックリーダーシップは注目されてきました。もともとオーセンティックリーダーシップっていうのは、ちゃんと倫理観を守るとか、ポジティブであるとか、良識に基づくとか、当たり前の話なのです。 

川嶋:おっしゃる通りですね。わざわざ名前を付けることもない、人として当たり前の話なんですよね。 

荻野:当たり前の話なのですが、行き過ぎた資本主義から出てくるそういったネガティブなものとか、あとは人の性質とかもあると思うんですよね。1人のカリスマCEOとか、起業家が・・・・。

6、カリスマCEOと倫理観

荻野:実はいつの間にか倫理観なしにビジネスをしていたとかですね。 最近も本を読んでいて、エリザベス・ホームズっていう。 

川嶋:医療ベンチャー企業Theranos(セラノス)のCEO、血液検査で話題になった会社ですね。 

荻野:そうですね。アメリカの若手起業家の女性で第2のスティーブ・ジョブズともてはやされて、一時期すごい注目を浴びていた彼女です。実はいろんな不正とか、サービスが成り立たないようなことも彼女のプレゼンテーションだけでやってしまったという話があって、今ちょうど裁判の真っ最中だと思うんですけども。そういったことが今の時代でも起こっている。オーセンティシティとか倫理観に、もう一回立ち戻った経営なり、在り方を注目しなきゃいけないなと思いますね。 

川嶋:本当にそうですよね。大きな時代の潮流で言えば、経済合理性や資本主義への傾倒が強い時代があり、それが行き過ぎて原点回帰で倫理観やオーセンティシティというところに今たどり着いていますけれど、これは、1人の人の在り方、1人のリーダーの在り方の中に元々あるべき倫理観を無視して、別のものを優先してしまう組織の意思決定や振る舞いをすることで、どの組織でも起こり得るということですね。 

荻野:そうですね。僕は一人一人の中に良識とか良心っていうのがあると信じたいけども、組織の理論や論理、周りの雰囲気などで、なんか違うな、これはおかしいのではないかということが言い出せない雰囲気になってしまっている。でもそれが日本の企業、特に古い企業に多いです。 


Vol.2に続く。


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