Dialog#2「オーセンティックリーダーシップ」一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事 荻野淳也さん Vol.2

前回までのお話では、荻野さんとマインドフルネスの出会い、世界的リーダーにとってのマインドフルネス、マインドフルネスに繋がる荻野さんの原体験についてお聴きしました。
前編の最後には、シリコンバレーのカリスマCEOの事例から、倫理観のお話に触れ、人は誰でも良心や倫理観があるはずだけれども、組織の理論や力学などで、声をあげづらくなっている硬直化した古い組織が日本企業には見受けられる、というお話でした。
今回はその続きをお届けいたします。


7、硬直化した古い組織

川嶋:人には倫理観や良心があるはずだけれども、組織の理論や力学で、おかしいなと思っても声をあげづらい雰囲気が特に古い組織にはある、ということですね。

荻野:そうですね、古い組織ですね。日本の政府の体制とか管理の体制も、そろそろ制度疲労とか硬直化して、過日の森元首相の発言や、オリンピック組織委員会の問題を見ると、いよいよまずいなと。頑張っているのは分かるのですけど…

川嶋:さまざまな問題を内包させていた旧来型の体制は、そろそろ終焉ですよね。

荻野:終焉だし、世界から注目されていますよね。この日本の化石化した体制で大丈夫なのかと。
森元会長の後任で女性のリーダーになりましたが、本来の彼女らしいリーダーシップが発揮できない中にいるんじゃないかなと思います。

川嶋:そうですね。やはり今回のオリンピックは本当に象徴的だなと思いますが、世界標準のリーダーたちのリーダーシップの在り方、世界のリーダーたちがこうあろうと努力をしている姿と日本はあまりにもかけ離れている。

荻野:かけ離れ過ぎちゃって、そこが世界からすると象徴的に見えてしまっている。

川嶋:衝撃的ですよね。

荻野:僕たち日本人はそこに気付いてないという構図があると思っています。麻痺してしまっている。

川嶋:おっしゃる通りですね。まさに時代の転換期に私たちは現役世代で生きてるということを、まざまざと感じますね。
ありがたいことに、荻野さんも私も海外のリーダーたち、それもトップリーダーたちに会って、この大きすぎるギャップを感じているからこそ、ここは翻訳・通訳しながら日本の皆さんと一緒に考えていく必要があると思います。

荻野:アメリカではこうですよとか、世界標準はこうですよって言っても、まだ伝わりにくいと思うのですよね。感度が良くてピンとくる人はいると思うのですが、実際に硬直した組織の方々にどう伝えるか。おなかの辺りでモヤモヤを感じているのだけど、それがまだ言語化できてなくて、でも違うな、と、感じている方はきっと沢山いるように思います。まだまだサイレントマジョリティになってる方々に対してどうアプローチするかっていうところが、川嶋さんや僕の役割なんじゃないかなと思います。

8、健全なモヤモヤは大切なシグナル

川嶋:本当にそう思いますね。その視点で言うと、抽象度の高いグローバルな動きの話から、個人レベルの話にシフトしてみたいなと思うのですが、硬直化した組織に若い世代は後から入っていく形になりますよね。
そうすると、組織の構造上、どうしても個人の想いや意見より、組織内の常識や慣習におされて、サイレントマジョリティになっている方は沢山いらっしゃるのではないかと思います。
既に出来上がっている硬直化した組織の枠組みの中で、どうしても自分の倫理観や、肌感覚でつかんでいる時代の感覚よりも、求められる役割を全うしなきゃと思ったり。でも自分の深いところで感じているオーセンティックな自分としては「なんか違うよな」という、なんとも言えないモヤモヤした葛藤を感じている方って、実は沢山いらっしゃるのではないかと思います。
そういう方たちに向けて、何かヒントやメッセージをいただけたらと思うのですが、荻野さんいかがでしょうか。

荻野:川嶋さんが今おっしゃっていただいた「おなかの方でモヤモヤを感じる」という言葉がありましたけども、結構僕はモヤモヤはすごく大切だと思っています。僕が行うワークショップの中では、「健全なモヤモヤが大切」と伝えています。

川嶋:「健全なモヤモヤ」、いいキーワードですね!

荻野:モヤモヤって実は大切です。

荻野:丹田の辺りって日本だと「肚(はら)」と言って、大切にされてきました。英語でいうとガッツ・フィーリング。ガッツって腸のことです。生物の進化からすると、我々の脳ができる前に腸だけの生物だった時代が長いのです。腸は本能とか直感を司っているのではないかという話もあります。モヤモヤを肚や体で感じる感覚というのは、僕たちに何かを教えてくれてるんです。

川嶋:シグナルを発してくれている、ということですよね。

荻野:はい。そのモヤモヤが気持ち悪かったり、耐えきれない人は、それを見てみぬふりをしたり、「でも、やっぱり・・・」と言って忖度が始まったり、諦めが始まったり、周囲に流されてしまったりすると思うんです。それでうまくやっていける人は、ある意味でいいと思いますが、モヤモヤを感じながらそれをやっていくと、やっていった結果、僕は一つの現象として、うつが多いという傾向が現れてるんじゃないかなと思うのです。まさに先ほど川嶋さんがおっしゃってくれた、頭の部分とおなかの部分との乖離にも耐えきれずにうつとして症状に現れる。

川嶋:なるほど。

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